正倉院展拝見

 今年も、ご招待頂き、正倉院展を拝見して参りました。毎年、入れ代わり立ち代わり少しずつ違うものが展示され、実にその所蔵の多さに感動します。

 今年は、数日前に、その所蔵庫である正倉院の公開があり、そちらにも行って参りました。思っていたより小さい感じがしましたが、この中に、1000年を超えて、あれだけの工芸品や文書が保存されてきたことには驚きを感じました。校倉造の建築構造が空調の役割をして保存されたのだと昔教わりましたが、どうもそれは正しくないようで、複層の箱に保存されていたことの効果が大きいと最近知りました。いずれにせよ、太古の品々が今、私たちの目の前にその美しさを留めて展示されていることは奇跡に値するものには違いありません。

 さて、ここからは素人の私の妄想的感想になりますが、展示を巡るうちに、こんなことを考えました。特に儀式のコーナー、大仏開眼の筆と、その筆につけられた紐を見るにつけ、奈良時代に行われた大規模イベントに思いを馳せます。誰があの筆に幾筋もの紐を結わえ、その功徳を受けられるようにと多くの人がその紐を手に取るという演出を考えだしたのでしょう?折しも関西万博が終わった直後ということもあり、大きなイベントのプロデュース如何なるや、といった点です。今でこそ電通や博報堂といった企業や、イベントプロデューサーといった職業がありますが、奈良時代に誰があんな大イベントをプロデュースしたのでしょう?考えられるのは、天皇を取り巻く官僚や東大寺の僧侶なのでしょう。そして多分見本が中国にあったのでしょう。古来、宗教儀式というものは、見方を変えれば、もともと権威をたたえる演出でありプロデュースともいえそうですから、その延長で大イベントもこなせたのかもしれません。が、海外からもVIPを招き、スケジュールを刻み、あっと驚くショーを企てる、これは現代の万博を催すほどの一大企画だったには違いありません。今年も戸籍の記録や、租税の記録も展示されていましたが、このような事務処理、記録をはじめ、大型企画のプロデュースまで、現代のすべてが奈良時代には出来上がっていたということにまたまた驚かされます。今はそれをコンピュータを使ってやっているだけか、と!

 最後にもう一つおまけの感想を。今年も弦楽器が出品されていました。螺鈿が配された紫檀の琵琶などとは違って、今回は地味な桑の弦楽器でした。ただ、弦楽器を趣味にしている私にはこれまでとちょっと違う点がありました。一つは、胴が薄く平たく、かつ周囲が金属で巻かれていることです。バンジョーのような形です。そしてもう一つ、大きな違いは、フレットがあるということです。これまで見たのは、いわゆるフレットレス、琵琶です。しかし今年のには、白い木(?)でできたバーが弦の下に15本ぐらい間隔を置いて配置されていました。すでにフレットのある楽器が登場していたのですね。解説には工芸的な説明はされていましたが、楽器としての解説はありません。できれば、楽器の歴史を踏まえた解説もしていただけると音楽愛好家には嬉しいかなとも思いました。

以上とりとめもなく書き連ねましたが、素人の戯言とお許しください。今年もありがとうございました。


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