店主ブログ
明けましておめでとうございます。凡豆も9日からスタートしました。本年もよろしくお願い申し上げます。
正方形の大きなガラスケースの中央に、30cmほどのその尺(物指)は、優雅に起立していました。ただ、今回は、実用的な目盛りなどは、はっきりとはせず、緋色の装飾の美しい尺でした。
今年もまた、正倉院展に行ってきました。平日の夕方でしたが、まだ会場は結構な人で混雑していました。今回は、メインの展示品を含め、染色関係やアクセサリーといったものが充実しているようでした。
さて、昨年も、尺に感動した話をここに書きましたが、今年も同じ場所に冒頭の尺がありました。そして、もう一つ、なんと、ガラス細工のアクセサリーの展示の中に、3cmほどのとても小さな透明なガラスの尺がありました。ちゃんと目盛りも刻まれているんですが、腰紐などに着けるアクセサリーなんですよ。かわいいと言えばそれまでなんですが、何か触発されるものがあり素人の私も思わず想像の翼を広げてしまいました。
尺は単なる道具ではなく、権威あるものなんではないか。実用使いでもあるが、天皇に献納するものでもある。それにあやかろうとするアクセサリーにもなる。なぜなのか。尺度というものは、モノの基準となるもの、つまり世の決まりの基を示すもの、それは、イコール皇帝のことであり天皇ということになるのではないかと。それ故、尺つまり物指は、権威の象徴の一つであり、珍重され大切に扱われ、献上品にもなったのではないかと。(なんちゃって解説、ワオッ!) 余談になりますが、大工の使う曲尺(指金)という直角定規に目盛りを振ったものがありますよね。建築には欠かせないものですが、かつては、今ほど精度が良くないので、棟梁の曲尺がすべての基準であり、他の大工は、それに従って曲尺を調整して仕事をしていたといいます。つまり、基準となるものを司ることは、すべての上に立つものということを物語っていますよね。
さて、今年も様々な記録文書に目を見張りました。当時の文字が完璧なのと、すでに今と同じ記録というものが確立していたことには想像以上で驚かされます。中でもちょっと感動したのは、奈良の各村々の記録の中に、「山添」、「添上」という文字があったことですね。この名称は、今でも山添村、添上郡、添上高校などと使われているものですから、これが、すでに奈良時代に誕生していたということは、いかに奈良時代から現代までが継続しているかを感じないわけにはいきませんよね。奈良時代が昨日のことのように思える一瞬でした。
それともう一つ、今回は工芸品の創作の解析や復元に関する展示が際立っていたように感じましたが、本当に恐れ入りました。というのは、ひとつは、当時の技術のレベルの高さに、そしてもうひとつは、それの探求への取り組みと、その復元に取り組みを続けている方々に、ですね。
というわけで、ことしもまた、招待状を頂き良いものを拝見させて頂きました。ありがとうございました。
ようやく夏の暑さも収まり、過ごしやすい季節がやってきました。健康づくりの秋ですね。私も、高齢者の一員になってしまいましたので、身体の維持に心がけなければと思い、なにが良いかなと考えた挙句、自転車、つまりサイクリングをすることにしました。ジムで筋トレというのも勧められましたが、どうせなら、外に出て、好きなところに行ってみて、かつ足腰が鍛えられたらその方が楽しいなと思ったわけです。
7月、ジムに通うための何回かの費用をまとめてつぎ込んだつもりで、クロスバイクという自転車を購入しました。中学の頃は、手放しでもすいすいと乗れていた自転車なのですが、この歳になって久しぶりに乗ったらよたよたと情けない限り。それでも、この2か月ほど定休日毎に、近場を乗り歩いたら、なんとか、少しはまともになってきました。
せっかく奈良にいるのですから、手始めは、平城宮跡に行ってみたのですが、思った以上に素敵な場所です。東大寺や、春日大社を見るよりも、天平時代を身体いっぱい感じることができました。自転車も安全に走ることができて、もう二度行きました。。定番コースです。それから少し足を伸ばして、西ノ京の薬師寺、唐招提寺へも行きました。次はさらに法隆寺まで出かけてみようかと思っています。車ばかりの生活だったのが、自転車に乗ってみたら、新しい奈良の地図が開けました。
さて、サイクリングしてみると、なんとも、身体の左右のバランスがリセットされて正しい位置に戻ったような感じでとても身体が楽になります。さらに、太ももの裏表の筋トレもしっかりできて、このまま80歳まで続けられたら、なかなかいいんじゃないかと思うこの頃です。
久しぶりに珈琲の話題です。
いきなりですが、フィルターとドリッパーについて、あなたはどのくらい関心をお持ちですか? 持っている人はとことん持っている、が、持っていない人は、全く無頓着、というのがフィルターとドリッパーなんですね。極端な例だと、フィルターが無かったらティッシュペーパーで代用、なんて強者もいたりしまして(笑)。
先月、カリタの営業マンさんと話をしていて、「カリタのドリッパーには、やっぱりカリタのフィルターを使って頂きたいですよね。」というから、「それはそうでしょうけど、なんでなの?お客様にどう説明するの?」という話に発展、思わぬフィルター談議になりました。結論から言うと、ドリッパーとフィルターは両方合わせて抽出がうまい具合に行くように調製されているので、相思相愛、やはり純正品が良いということなんですが、まだわかりにくいですよね。その時の話を元に、少し詳しく書いてみましょう。
珈琲の抽出には、どのくらいのスピードでお湯が珈琲の粉を通過するのか、別の言い方をするとどのくらい長くコーヒー粉とお湯が触れあっているかが、大きなポイントになります。この点、ドリッパーについていうと、底にある穴がどういう形状でどういう大きさかという点が、関係します。カリタ製品の場合、一般的には3個の小さな穴が横一列に並んでいますよね。ここで湯の落ち方をコントロールしているんです。そして、それに合うように、湯がフィルターを通過することも肝心なんですね。そのために、フィルターの目の細かさ、いわゆるメッシュ、これが、ちょうどよくできている必要があるんです。フィルターは紙漉きしてできる紙ですから、繊維の集合体です。見た目は同じように見えても、顕微鏡で見れば、目の粗さは漉き方によって違う訳ですよね。以前、当店のお客様が、フィルターを切らしてしまい、100均で買ったフィルターで淹れたら、サーっとお湯が落ちてしまって味のない珈琲になってしまったとおっしゃっていましたが、これもメッシュの違いですね。さらに、紙の質やコシ、つまりどんな素材(木など)を使っているかで、紙が吸い取る水分、成分の質や量も異なります。カリタ製品の場合、国産ヒノキということですが、他メーカーのもので、オイル分を通しやすくネルドリップの味が出せるというものもあります。結果、こういったことが総合されて、抽出が行われるわけですが、だれが淹れても、比較的同じように、おいしい珈琲が出せるということにポイントを置いたのがカリタさんのドリッパー&フィルターセットということのようです。ちなみに、メリタさんのドリッパーは、底に小さな穴が一つ、ボンマックさんは、漏斗の先端に、大きな一つ穴、それぞれに意味があり、それぞれに合うフィルターが用意されています。そしてそれぞれ出しやすい味というものがあります。もし、関心を持たれた方がいらっしゃったら店頭の商品を確かめてみて下さい。当店では、詳しい御説明もさせて頂いております。そしてこうして、あなたも珈琲の深い沼にハマッテイクというワケデス・・・ネ?
とはいえ、やはり、元の珈琲豆がおいしく仕上がっていないといけないわけでして(汗)、焙煎屋としては今後とも精進努力することをお約束して、今日のお話はお・わ・り、デス。
先日、近所の飛鳥小学校の2年生が校外学習で店に来てくれましたよ。昨年もですが、近隣の職場を訪問してインタビューをしてみようということらしいんですね。男の子と女の子と合わせて11人、2年生ともなると、さすが1年生とはだいぶ違って小学生らしく成長しています。とはいうものの、小学2年生に何をどう話せばいいのか、考えますよね。珈琲って知ってる?お家で飲んでる?から始まって、暑いところにある外国で採れる豆で、船で日本にきて、ここで窯で焼いて茶色い豆になって、それを挽いて飲むんだよ、なんてにわか先生みたいですよね。それでも、インタビューになると、実に活発に2年生君たちは質問したり、驚きの声をあげたり、となかなか積極的でした。最後に、珈琲の生豆5粒と、焙煎した豆5粒の入った小袋を1人ずつにプレゼントして無事終了。
前にも書きましたが、子供のころに、この店の前を通って飛鳥小学校に通っていたいう方が、今、そのお子さんや、時にはお孫さんだというお子さんを連れて、豆を買いに来てくれています。だから、先行投資!なんて言いませんよ(不謹慎!笑)、ここでお店をやってる以上、やはり地域の子育てに多少なりともご協力できればと思っています。後日子供たちのお手紙が届きました。ありがとう。(下写真)
桜もそろそろ散り始め、新年度がスタートしました。店の前の通りは、近所の小中学生や、この先の大学に通う新入生でまた賑わしい日々が戻っています。
さて、そんな新しい学びの始まりの季節、私もこのところはまっているものがあるんですよ。それは、YouTube(ユーチューブ)。ご存知、インターネットの動画サイトです。少し前には、ユーチューバーと呼ばれる人達の一部が迷惑動画や危険動画でニュースを賑わしましたが、本当はYouTubeには、すばらしい動画がこれでもかというほど沢山公開されています。何かを学びたい知りたいと思ったら、あらゆる分野で、専門家からアマチュアの方々までの解説を視聴できます。しかも、無料でですよ。(広告は入りますが。)学校に行かなくても、今すぐ、この場で始められます。叩けよさらば開かれん、物は使いようです。いい時代です。
ちなみに今私が毎晩見ているのはジャズ音楽関連の動画なんですが、昨年末ウクレレでジャズを弾けるようになりたいと思い、見始めたんです。楽器の解説からはじまって、弾き方、音楽理論、ジャズの歴史まで芋づる式に次から次へときりがないほど解説がでてきます。しかも、そのどれもが、実にお話し上手で、画像解説有り、実演有で、わかりやすいことこの上ないんですね。日本人っていつの間にみんなこんな風に話せるようになったんだろうと、これはこれでまたびっくりしてしまいます。今までよくわからなかったことも目から鱗、学校の授業もこんな風にやってくれたらどんなに楽しくわかりやすかっただろうと思ってしまいます。音楽のほかにも、宇宙の話、歴史の話、名作の朗読等々、楽しめます。一時は、シャーロックホームズの朗読を聞くのが寝る前のたのしみだったりしたこともありました。全編聴きつくしましたよ。たまには政治経済、時事問題の解説も勉強になります。
私も今年70歳、新たな学びの季節がやってきました。YouTube先生よろしくお願いしますね!そして、いつか私も何かでYouTube先生の一人として参加できるようがんばります。
※追伸 コーヒーの焙煎や淹れ方に関する解説動画もいっぱいでています。関心のある方は一度検索してみて下さい。
新年あけましておめでとうございます。・・・ではありますが、元旦早々の地震で、多くの方々が被災し、死者、行方不明者がまだ増え続けています。ウクライナへのロシアの侵攻は、また年を越し、イスラエルは更に戦争を続けると言っています。国内も、世界も大変な年明けになりました。地球が変動期に入ったかと思われるこの時期に、隣人同士で戦っている場合ではないのでは、と思ったり、また、二度の世界大戦を経験した叡智ある人々が世界の指導者のはずなのにと思ってみたりしても、やっぱり人間は何度でも同じことを繰り返すようです。なぜでしょう?政治学、経済学、社会心理学等々、様々な切り口から、その答えを模索して成果も上げてきているのにも関わらず、ちょっとしたきっかけから、一部の人間の暴走が、瞬く間に国中に、世界中に燃え広がる。やはり、人間の限界か、人類の宿命か。だとしても、生きている限りは、平和で穏やかな世界の訪れを求め、諦めないで生きていきたいと思う年明けです。
こんな時だからこそ、少しでも、心の癒しになるような珈琲をお届けできますよう本年も努力したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
正倉院展が今年も開催されています。私も何年振りかに行ってきましたよ。コロナも少し治まって表通りは外国人客であふれかえっていますが、会場内は予約制ということもあって比較的落ち着いて見学できました。ゆっくり解説文を読んだりして、いまさらながらに知ることも多く貴重な時間を過ごさせて頂きました。
今回私が注目したのは、象牙で作られた長さ1尺のものさしでした。白い象牙の板に手加工とは思えないきちっとした黒線で、1寸、1分と、きれいに10進法の目盛りが刻まれています。精密な厨子や、机、ひいては大仏殿のような建築まで、緻密で正確なすばらしい加工技術の原点を見た思いでした。
今から1200年も前に、既に現在と遜色のない、いやそれ以上の物が作られていたことに本当に感動させられます。昨日今日出来るようになったと思うような事が、1200年も前にできていた、ということに現代人の思い上がりを感じます。まさに正倉院というタイムカプセルが現代人へ伝えてくれるメッセージに触れた思いのひと時でした。
(※今回は、凡豆のお客様から招待券を頂きました。貴重な機会を頂きありがとうございました。)
そろそろ梅雨の時期が近づいてきましたね。湿度が高くなります。珈琲の生豆の保存や焙煎にも影響が出てくるので気になるところです。
さて、その湿度ですが、60%なら高くて蒸し暑い、35%なら低くて心地よいなどといいますよね。確かにそうなんです。が、では気温30℃で湿度50%と、気温15℃で湿度50%とは、同じ湿度なんですかね? こんな疑問持ったことありませんか!
そうなんです。実は違うんです。気温30℃の方が15℃の場合より空気中の水分(水蒸気)は多いんです。より湿った空気という訳ですね。どういうことかと言いますと、湿度50%というのは、その時の空気が含むことのできる目いっぱいの水分の内、50%までを含んでいるということなんです。そして空気が含むことのできる水分の量は何で決まるかというと空気の温度、気温なんです。気温が高い方がよりたくさんの水分を含むことができるんですね。だから、同じ50%と言っても、気温15℃の時より30℃の時の方が空気中に含まれている水分は多いということになるんですね。
では、それをストレートに示してくれるものはないのか、あったっていいじゃないか、と思いますよね!これあるんです‼ 単位はg/㎥、つまり、1㎥の空気の中に何グラムの水分が含まれているかを示すものです。そして、それを測る湿度計もあるんです。「絶対湿度計」といいます。
実は、湿度には2種類あって、最初に出てきた%表示の方、これを相対湿度というんですね。ですから、一般には「相対湿度計」を使っているという訳です。でも、豆や焙煎にとっては空気中にどれだけの水分が含まれているかわかる絶対湿度の方が具合いいんですよね。みなさんのお肌の乾燥具合もそうじゃないですか?ですから、絶対湿度のことを乾燥指数などという呼び方にしている湿度計もあります。どちらかというと、冬場に乾燥を防ぐために加湿器を使う目安にするなどという使い方が一般的だからです。
なんとなく使っている湿度計、ちょっと参考になりましたか?かく言う私も、たまたま焙煎の仕事をしているから知ったことですが。ちなみに、当店でも使っている写真の湿度計は相対湿度と絶対湿度の両方が表示できるもので、お手頃価格です。
新年度が始まりあちらこちらで新生活がスタートしていますね。凡豆の周辺の古い住宅街でも、この数年、空き家を壊した後に新しい戸建て住宅が5軒10軒とできていたり、町家をリフォームして新しい人が移り住んだりという変化が起きています。
そのせいか、凡豆にも新しいお客様が訪ねて下さるようになりました。その中には、小さなお子様連れの方も目に付くようにもなりました。大阪や東京から引っ越してきました、とおっしゃる方もいらっしゃいます。通りに子供の声が聞こえ、子育て中の親子連れの姿が散見するとやはり町は活性化してきている感じがしますよね。
前にも、書きましたが70年近く続いている店ですと、親子3代でご来店下さっているお客様もいらっしゃいます。今日、新たにお訪ね頂いた小さなお子様連れのお客様も、そのお子様がまた大人になってご来店下さるよう当店も頑張りたいと思う春のひと時でした。
年も明けて、はや2月も下旬となりました。2月28日は、当店創業者の96歳の誕生日です。すでに、現場からは、引退しておりますが、店には顔を出しますし、デイサービスを利用してリハビリに行ったりの日々を過ごしております。さすがに、年相応の認知機能の低下や、体力の衰えとともに、店奥のベッドで寝ている時間が長くなりました。昔を懐かしんだり、健康を気遣ったりして、古くからのお客様が声をかけて下さることもあるのですが、なかなか思い出すのには苦労しているようです。が、96歳とは思えぬ元気さで、食欲旺盛、相変わらず自己主張しっかりといったところでしょうか。もともと身体が強い人だったようですが、80代半ばまで続けていたスイミングスクールがさらに健康寿命を延ばしたのではないかと思われます。創業者が20代で始めた凡豆は多くの皆様に支えられて今年で68年になります。
サイボーグ化する人間と人間化するロボット。鉄腕アトムの世界では人間化したロボットは登場しても、人間は人間のままでした。しかし、今や人間のサイボーグ化が日々現実化しているんですね。
と、実感したのも、自身が先般、白内障手術をして眼内レンズを入れたのがきっかけです。 生まれ持った目のレンズを破棄して樹脂製の人工レンズに置き換えたわけですね。つまり私の身体は一部サイボーグ化したわけです。今や私のような熟年世代の多くの方がこの手術を受けています。一般的には短焦点レンズを入れるわけですが、遠近両用の多焦点レンズにすることもできるそうです。さらに進化すれば、エイトマン(ご存知の方は同世代!)のように暗闇でもモノを見ることのできる人工の目にする日も来るかもしれませんね。 事程左様に、義足、人工関節、人工臓器をはじめ、IPS細胞による様々な部位の複製品も次々と開発されています。まもなく、他人からの移植という手法も過去のものになるのかもしれません。このわずかの間の科学、医学の目覚ましい発展は、人間が振り返る間もないスピードで進んでいます。いったい人類の未来はどうなるのか・・・
2022年もまもなく終わり、期待と不安の新年がやってきます。皆様には今年も一年間、珈琲屋凡豆をお引き立て頂きまして誠にありがとうございました。今後とも健康には留意しておいしい珈琲豆をお届けできますよう精進していきたいと思います。 皆様も、どうぞよいお年をお迎えください。