音楽が大好きな私ですが、時折、焙煎ってのはJAZZの演奏みたいだよなあ、などと思ったりすることがあります。今日は芸術の秋ということで、大胆にも音楽と珈琲豆の関係について(大袈裟ですね、笑)、ちょっとこじつけをしててみたいと思います。
さて、珈琲には様々な銘柄があります。コロンビアとかキリマンジャロかモカとか、専門店に行けば何種類もの豆が並んでいますよね。しかし、キリマンといえばどの店でも同じ味の豆が手に入るとお思いですか?、いやいやそうではありません。大きくはキリマンなのですが、それをどう仕上げているか、美味しい美味しくないはともかくとして、苦みが強い、酸味が強い、コクが深い、あっさり気味、など、店によりそれぞれ多少の違いがあったりするものです。それはなぜか?ジャズでは、一つのテーマメロディを演奏者が自分なりに解釈して、アドリブしていきますよね。そこでは、単純なテーマの展開から、テーマに触発された、もっと自由な演奏まで幅広いアドリブが繰り広げられます。根底には演奏者のテーマ解釈や音楽的感性が大きく影響しています。キリマンの話にも似たようなところがあります。同じ豆でも煎り方、仕上げ方により味も香りも変わってきます。(珈琲豆はカロリーの与え方と与える時間等で豆の中の成分の化学変化の進み方が変わり様々な味の変化を生み出すことができるのです。一番単純なところでは、浅く煎れば酸味が強く出ますし、深く煎れば酸味が消えて苦みが出てきます。さらに、香り、コク、口当たりなど様々な違いを引き出すこともできます。)ですから、それぞれの店では、これが一番おいしいキリマンの味なんだと推奨できる味を決めて焙煎し、販売しているのです。正確に言えば、店それぞれがアドリブした「うちのキリマン」なんですね。もちろん、キリマンという大テーマからは外しませんし、商売ですから、できれば多くの人から支持される味であることも頭に入れてはいますが。
さて、もうひとつ、音楽では、その曲をどんな楽器で演奏するかによっても曲の印象が変わります。トランペットか、ピアノか、サックスか、ビッグバンドか・・・珈琲焙煎の場合は、焙煎機の種類が楽器の違いになるのでしょうか。趣味の手網焙煎、単純なサンプルロースター、直下式焙煎機、半熱風式焙煎機、大型熱風焙煎機など、家庭用から、プロ用焙煎機まで様々あります。私たちのような自家焙煎店が使う中型焙煎機には主に直下式と半熱風式がありますが、さしずめその違いは、名曲「枯れ葉」をトランペットで吹くか、フリューゲルホーンで吹くかの違いに似ているようなものかと思ったりするものです。ちなみに、当店の焙煎機は、半熱風式10キロ窯、クリーンな酸味から深いコクと苦みの珈琲まで幅広くふくよかに煎ることができます。
さて、もう一歩お話を進めましょう。今度は、同じ店のキリマンであったとしても、これまた多少の違い(ブレ)はあったりするものです。(余りあってはいけないことですが。)JAZZでも同じ曲を同じプレーヤーが演奏しても、ライブではそのたびに違いがありますよね。一方、レコードなど録音では、いつでも気に入った同じ名演奏を聴くことができます。珈琲の焙煎でも、焙煎者はいつも変わらぬ名演奏を心がけてはいるものですが、工業製品とは違い、日々の気温の変化や湿度の違い、豆そのものの水分量のわずかな違いなどによって、毎日毎回ライブ演奏をやっているようなことになります。ですから、長年ご利用くださっている常連様はその辺を分かって下さって、大筋凡豆の豆をよしとして楽しんで頂いているのではないかと手前味噌に解釈しております。が、これは多少言い訳じみておりまして、本来専門店ではあくまで味の再現が大切なことですので、名演奏の録音のように常に最上の味をお届けできるよう努力を怠ってはいけないと肝に銘じて励んでおります。
という訳で、今日はJAZZになぞらえて珈琲豆の特性と焙煎のお話しをさせて頂きました。今後とも長い目で温かく凡豆とお付き合いいただければ幸いです。
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