少し前から、夕方に豆を買いに訪れる男性のお客様がいる。大柄で、なんとなく、こちらをほっこりとさせてくれるお人柄が素敵だ。この方が、ある日、今日はモカを頂こうと言って、価格表に目を落とすなり突然その場で歌を歌い始めた。「これってあのコーヒールンバのモカマタリですよね!」と言って。それが、なんとも微笑ましくて店の者も嬉しくなりました。この、コーヒールンバ、私と同じ世代(?歳)の方なら、小学生のころ一度は耳にしたことがあることでしょう。そう、西田佐知子の歌う「コーヒールンバ」です。西田さんは、今や関口宏さんの奥さんですが、当時は少しハスキーな声でなかなか魅力的な方でした。「♪むかし、アラブの偉いお坊さんが、・・・♪」と始まるこの歌の後半に「♪それはすてきな飲み物コーヒー、モカマタリ・・♪」という歌詞があるのです。全体の歌詞をみると、コーヒーというよりウィスキーにふさわしいような内容ですが、当時はそれだけ珈琲も舶来物の感じだったのでしょうか。さて、このコーヒールンバという曲、ベネズエラの作曲家ホセ・マンゾ・ペローニの書いた「Moriendo cafe(コーヒーを挽きながら)」というのが原曲です。平和な今のんびりとコーヒーを挽く、というのではなく、これは、コーヒー農園で強制労働させられている黒人青年の悲しき恋を描いたものでした。この曲を一躍世界にヒットさせたのが甥にあたるアルパ奏者のウーゴブランコ、あのセンチメンタルな響きで心地よいラテンリズムを刻むインストルメンタルナンバーです。高速道路のSAなどにある自動販売機で流れてくるのもそうですね。この大ヒットが世界中に広がり日本でも西田佐知子になったわけです。しかし、名曲は歌い継がれるものです。まもなくザ・ピーナッツも別な歌詞でカバー、さらに時代が進み、荻野目洋子がCMソングで歌い、さらに近いところでは井上陽水がなかなかすてきなコーヒールンバを聞かせてくれています。長くなってしまいましたが、最後になぜモカマタリなのか、という点について珈琲屋のうんちくをひとこと。モカというのはアラビカ種というコーヒー豆の品種のひとつです。アラビカ種はエチオピア原産の古い豆で、味も香りもよく、現在は世界中で最も多く栽培される品種ですが、15世紀ごろアラビア半島の商人たちがエチオピアのアラビカ種を世界に広めました。その時、豆の集積地となったのがイエメンのモカという港町でした。ですから、モカというのはいわばコーヒー発祥の地の代名詞であるとも言えるわけです。ちなみに、高価なモカマタリはイエメン産、モカシダモ、モカハラリはエチオピア産という具合になっています。現在凡豆で使用している豆はモカマタリNo.9という最高品種です。独特な甘い香りと酸味のきいた珈琲が楽しめますよ。
♬コーヒールンバで行こう♬
珈琲屋 凡豆-BON’S-nara japan
珈琲屋 凡豆-BON’S-公式ホームページ 奈良公園近くの住宅地にある珈琲豆焙煎専門店です。戦後まもなく操業して68年、焙煎一筋、毎日新鮮な珈琲豆を販売しております。
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